● うたごえ
流行り廃りの歌は 数多くあるし
上手な人の歌声に
感動して 目をうるませることもあるけど
でも 何かが違う
心が透明になって
全身があなたの声に包まれたいと願う
あなたの優しさと憂いから生まれた言葉は
生きたまま音符に変わり
私の中で 力に成る
純情を 愛と名付けるなら
この気持ちも きっと似ている
あなたにしか作れない歌
その声しか 私を勇気づけられない
真に求める気持ちが働く
だから 色褪せない
ずっとずっと 求めていたい
大切にしていきたい
● 7月の憧れ
なまり色の空 わずかに陽が射し
紫陽花から雫が光りを抱いて落ちる
7月が夏に囁きかける
青い空を見せてと
渇いた熱い風に吹かれてみたいから
● 瞳
猫がジッと私を見ている
なんだか
テレパシーを送っているようだ
でもわからないよ
ゴハン?
背中を掻いて?
お外へ行きたい?
わからないから わからない分
知ろうとして
お前を好きになるんだよと
うる覚えの猫語で言ってみる
伝わるかな?
● カンナ
赤いカンナ 咲いてた
太陽の赤ではなくて
娼婦がくちびるに塗る
毒を含んだ深紅
夏の夜は 幻だと囁いた
黄色いカンナ 風に揺れた
さよならを言う時
振っていたハンカチに似た
花びらの動き
また逢える?と聞きたかった
夏は 短すぎて
花は燃えるように
色づいて咲き誇る
その情熱にとまどうひとは
夕景の舗道で風に吹かれている
花を見つめたまま・・・
● 夏の幻影
高い波がさらっていった
男の子は 今 どこに
夢に見た海賊の宝島へ行けたかな?
それとも
夏の神様に気に入られて
泳ぎの上手な魚になって
南の海までひと泳ぎしてるだろうか
海の底で 太古に
命が生まれたなら きっと
あの子は 新しい命をもらって
笑顔で何もなかったように
明るく笑って走ってくる
テトラポットに砕け散る波のしぶき
あの日吹いていた風は
地球の 今 どこに
その身を休めているんだろうか?
教えておくれよ
夕景の砂浜を後に出来ない
泣いている友達と彼の両親に
彼の行方を知っていたら すぐに
信じてる
信じて待っているんだよ
● 日暮れに
空ごと落ちてきそうな
黒い雨雲 垂れ込めて
時間が止まる
夕刻と夜の境目で
雨が降り出す前に
何をしておこう
どうして焦るんだろう
夜と闇の入り口で
空気が湿ってきた
風が重くなる
虫も息をひそめた
時間が眠りにつく
闇と夢に抱かれて
● 狂詩曲
雷が鳴り響く
コンクリートを夕立が走り抜ける
八月はこの胸に
サヨナラを切りつけた
耳鳴りのように
ひとことは 巡る
ラプソディのように・・・
● 貝殻
貝殻を耳にあてると
波の音が聞こえると言う人がいる
貝殻に閉じこめられた想いは
深海に住む魚の淋しさだけ
目を閉じれば光りのない海の底
涙流せば さざ波に洗われる小石の気持ち
胸騒ぎのような空耳のひとことが
一瞬 聞こえた気がする
しめつけられるような懐かしさがこみ上げて
貝殻を海へ帰した
夕陽が映る海面めがけ 弧を描いて飛べば
貝殻は 流れ星になった
● 光り満ちる場所
夏は
あなたの微笑みの中にあった
だから
もう二度と
巡っては来ない
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