遠い感傷
いつか聞いた歌のワンシーンみたい
あなたの名前の出ている雑誌を開いたまま
本屋で泣きそうになった
打ち込まれた文章だけが
憧れの輪郭線だった
ディスプレイを通して
夢を広げていく
あなたの毎日を追いかけていた日々
ページを開いたまま
自分の胸も張り裂けるように開く
こぼれていく想い
打ち明けなかった気持ち
そのひとつひとつが 針になって飛び出すから
痛くて痛くて痛くて痛くて
やっと一回 深呼吸して
本を棚へ返したけど
この気持ちは どこへ返そう
あなたの話に
また 胸をドキドキさせたい
叶えられない願いと知ってる
我が儘にすぎないと
憧れ・・・
夕焼けと夜の間の
紫がかった紺色に染まる
それは 遠い感傷
心のアザの色です
放浪
疲れたときの独り言は
いつも
かえりたい・・・の繰り返し
帰りたいのか
還りたいのかわからない
返りたいのか
孵りたいのかわからないのに
かえりたい・・・とつぶやく
ぐったり疲れて 座ることも横になることも
鬱陶しいほど ただ ポカンとしていたくなる
かえりたい・・・
どこへ? どうしたい? どうなりたい?
かえりたい・・・
ただ かえりたいんだよ・・・
かえりたいだけなんだよ・・・
憂鬱
命が膿んでいく
湿度の高い 曇天の朝
ボタリ ボタリと
落ちてくるのは 泥の雨
5月には
青いイチョウの葉で車を作り
イモムシにひかせ
のろのろと出掛けよう
雨雲がちぎれて 黒い雹が降る
粉々にくだけた自分の姿を
ニタリ ニタリと
冷やかし顔で 眺めるのもいい
5月なんて
梅雨のはしりのまやかしさ
説教くさいこと抜きで
ぼちぼちと生きてみよう
予感
好きなひとにだけ 働く
不思議なちから
空気がうねる
皮膚に触れて 何かを感じる
振り返ると そこに
いつも あの人はいる
おかしなくらい 働く
愛のちから
皐月の空の下、見る夢の色は
皐月の空を仰いで その美しさを咲き誇る
薔薇を一本あなたに贈るなら
私が選ぶのは
深紅でもなく 純白でもなく
濃いオレンジの薔薇
それは まるで
炎のようなオレンジ色
初めて誰かの為に唇を彩り
ときめきを隠しきれず
微笑みがこぼれる
そんな 瞬間の輝きに似ている
隠されたトゲさえも
丸みを帯びて 誘惑の形を成している
そっと 傷つけたい
甘い香りに痺れながら 夢を見てほしい
走り書きのひとことを
書いた便箋にくるんで
あなたに届けよう
オレンジの薔薇が
あなたの心に 火を点すことを
切なく祈りながら
恋する
気持ち込めて
歌うときに
まぶた 伏せるひと
長いまつげ
とても やわらかそうで
とても・・・
やさしそうで
歌声に 惹かれて
書いた詩に 魅せられて
猫背な後ろ姿に 微笑んで
そして まつげに一目惚れ
恋する・・・
最初のその音は
きっと 響きのない音
耳の奥で 振動が心臓へ直接伝わり
心で聞くから
そして まつげに一目惚れ
見るたび 深く深く 恋する
恋してるから 生きてることを感じる
ホント まつげに一目惚れ
ほつれ
恐い
胸の真ん中から
沸き上がってくる恐怖
自分の中から自分が逃げ出し
隠れたいのに
真っ白い光りの中
どこにも逃げ場が無くて
足がすくんでくる
恐い
恐い
恐い
ほつれた糸を ひっぱらないで
私が崩れてしまう
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