●方程式
   捨ててしまえば 軽くなるはずなのに
   どんどん 重くなる

   苦しい

   苦しい分 生きてるんだな


●慕情
初めての恋は 実らぬもの
鮮やかに咲いて 散っていく
人生の春を彩る桜のように

最後の恋は 秘めるもの
告白もせず静かに想う
夕暮れに空を染める赤のように

愛情に限りなく近く
されど情熱を持つ
そんな恋が存在するのです


●こっぱみじん
  あなたは どんな言葉で
  わたしを振ってくれるのかしら

  言葉さえなく置き去りなのかしら

  導火線に火をつけたわ
  ねぇ 早く 何か言って

  何か 言ってよ


●雨
暖かで穏やかな春の雨というには
少し冷たい雨が降っている

昨日 見つけた小さい花は
頬を濡らして 今日は 寂しいだろう

冬が最後に残した
涙の文字のメッセージ
春が細い指で跡をなぞる

ふたつの季節の間で
揺れているのは 人も同じ

雨だれつたう窓を眺めながら
もう 4月だと何故か溜め息

春は そんな戸惑い気分の季節
憂鬱でいて どこかおかしくて苦笑い
迷路の中の時間


●おはよう、
  悲しい気分で目覚めた朝は
  トーストに甘ったるいジャムを塗って食べる
  そして いつもより濃いめのコーヒーで
  くしゃくしゃした気持ちを
  喉を通らない気持ちを
  飲み込んでしまえ

  少し焦げたパンは その身体をさらけ出し
  皮肉な笑みを浮かべる
  さぁ 囓りつけよと
  不敵に挑戦してくる

  ガリッと咬んだ 少し苦くて
  ジャムがとても甘い
  よけいアンバランスな気持ちでいっぱいになる

  くしゃくしゃした気持ちを
  どうにもならない事まで
  飲み込んでしまおう

  おはよう、ボク
  おはよう、1日、ガンバレよ


●卒業
・・サヨナラが別れの言葉だと
気がついた刹那 張り裂けそうな胸の痛み
表情は 曇天の空より 妖しくて

でもそれが あなたの決意なら
私は 友情の証として 受け止めなくてはならない

責めることも すがることもなく
ありがとうと笑って 見送る力を奮い立たせなくてはならない

泣くのは もう少しあとでいいね

思い出し笑いしながら 涙がにじむなら
きっと この心も大丈夫だろう

いつも明るく楽しかったあなたとの時間
思い出の全てを悲しみで汚したくないから

一度うつむき さぁ 顔をあげて
息を吸い込んだら 言える

別れの言葉だと気付いた衝撃で
膝が震えて 止まらないままだけど

ありがとう そして サヨナラ

ありがとう ありがとう ありがとう

ありがとう


●紅の告白
  止まった時計を動かすのは
  どんな力でしょう

  過去へ時間を進ませたい時
  どうすればいいでしょう

  未来の自分と向き合いたいなら
  近道はありますか

  あなたに逢えないと
  私は 盲目の老人より
  何も感じることの出来ない
  ちいさな存在になってしまう

  あなたの導きが無いと
  私は 業の深い罪人よりも悪く
  捻れ腐った愚かな考えしか
  浮かんでこないのです

  ねじを胸の真ん中へ差し込んで
  よどんだ時間の渦を 巻き上げて
  明日へ勢いよく流してほしい

  心臓から滴る血の一滴一滴に
  あなたを愛する気持ちが
  赤々と輝くうちに


●不変とは
逢えない辛さが 痺れていくのは
忘れるという幸せを
与えて下さった神様のもうひとつの優しさ

寂しさが足かせのように絡まり
前へ進めなくなっていたけれど
ひとすじの光り
涙の跡をなぞるように照らす

あなたがいなくても
あなたの素晴らしさは消えないことに
気がついた瞬間
それを信じて
心に抱いて行くことも
あなたを想うことだとわかった

好きです
きっと いつまでも

憧れと共に
あなたは 消えない

逢えなくても
ずっと 消えない


●春の海
  青く 青く
  波が重なるのを見つめていた

  耳に響く潮騒
  瞳から爪へ 身体が青く染まるのを
  感じている 今

  冬の銀色の波
  夏の人の渦
  秋の空とつながる群青の海

  春の海は 一番やさしくて
  いちばん 愛おしい

  青く 青く
  時間が溶けていくのを見つめていた




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