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天気がいいと気持ちがいい 太陽にあたると気持ちがいい ちょうどよく暖かくて気持ちがいい 暖房の暖かさではなくて 熱がある時のポカポカした感じでもなくて やさしい暖かさだから 元気な時の体温と同じかもしれない すがすがしい |
<クリスマスツリー> 中庭の植木のにわかツリーを眺めた 元気になりたいと頑張る人々の 沢山の願い星が木に集まったような 緊急救命を知らせるランプが チカチカと気忙しく点灯しているような 複雑な気分になる 病院のツリー でも とてもきれいだった |
<洗濯> 屋上のコインランドリーで洗濯した 乾燥機で乾かしたら 静電気が すごかった バチバチと音を立てるパジャマを たたみながら ひとり 笑っていた 素直に笑っていた 少し縮んでしまったのがおかしくて また 笑った 笑う元気が出たことが嬉しくて にっこりと微笑んだ |
<訃報>2001.12.24 朝食時 食堂のTVが ジャック・マイヨールの訃報を告げた 涙が出てきた 『 イルカと海へ還る日 』が来たんだね グラン・ブルー・・・・ 紺色の深海に命が沈み消えて 海底で彼は伝説として眠る 限界への挑戦 友情の素晴らしさ 彼に憧れた世界中のファンの一人として 冥福を祈る |
<ふたつの病棟> 東は小児病棟 西は産婦人科病棟 小児病棟には 遊び場があって 看護婦さんは ピンクやブルーのエプロンをしている 小さな患者さんを運ぶ飾りのついたベッド 帰りたいとぐずっている子 新生児の泣き声が聞こえる 一生懸命泣いている お母さんも一生懸命授乳の仕方を習ったり 診察を受けたり頑張っている ニットキャップを被った人がいる 抗ガン剤をもしかしたら投与して いるのかもしれない こんなに色んな命の形があるなんて こんなにそれぞれが出来る限りの力で 頑張っているなんて 今まで 知らなかった・・・ |
<青空> 屋上の柵 有刺鉄線の向こうに 青空が広がる 小さく青空を切り取って 愚痴をこぼしそうになったら それで 拭こうかな 晴れやかに笑えるように |
元気になると 急にさみしくなる とてつもないさみしさが どんどん 湧いてくる 手術直後は ひとつひとつの動作に 必死で 余計なことなど考えなかった さみしくはなかった 元気が出てくると人恋しさが目を覚まし 夜景の中の見知らぬ人の暮らしが気にかかる 普通な日々が懐かしくなる 病気より始末が悪いわがままな思い |
<初めまして> マスクがあてられて 全身麻酔が効いた瞬間 意識を失った 3時間・・・ 記憶の欠落 目覚めた時の困惑 初めてベッドから降りて 歩いた時のうれしさ 『 初めまして 』と言おうか 『 こんにちわ 』と言おうか 私であって もう 私ではない 自分が 鏡の中にいる でも 私はわたし たったひとり 世界にひとり これからも 私はわたしと生きる |