心の色


あなたが 漏らす小さなため息が
私を 淡くグレーに染める

ねぇ 微笑んで

そしたらまた 私も
輝くことができるから

僅かな言葉のやりとり
ひとひとつ大切にしながら
暖かなオレンジに心が染まる

あなたが優しさを少し
分けてくれたら もっと

私の想いは 情熱を含んで
朱く朱く 深みを増していく

そして 深紅に染まるとき
告白できたら 素敵でしょう



あなたへ


ひとしずく
葉先の露より小さい
愛の一滴が
胸の中へ 落ちて
大きな大きな波紋を描く
揺れる気持ち 胸騒ぎのような
ためらい とまどい
そして 同時に募る切なさ

言えない一言は
うまく言葉にならない
声に出してしまうと
その瞬間 自分が壊れそうで怖い

全身 あなたのことで
いっぱいだから
一言でも漏らしたら
バランスを失ってしまいそう

全部を受け止めて

いいえ 全部を拒否してもいい

どちらかしかない

いつも愛は・・・



パズル


きっと今の気持ちは
 パズルに似てる

 あとひとつ揃えたいのに
 揃わない

 どうしてもうまくいかない
 きっとどこかで
 無理に形を作ってしまったみたい

 素直なままの自分になれたら
 うまくいきそうな気がする
 だけど そうできない

 わがままが邪魔する
 ココロ・パズルは
 いつも 未完成



ピアニシモ


あんまり雨が
細く静かに降るから
なんだか空が
泣いているような気がして
夕暮れの冷たい空気が
少しづつ濡れるほどに
胸が締めつけられるようだ

刹那にあなたの顔が
浮かんで 消える
雨の波紋のように

逢いたいと思った
立ち止まってみても
どうにもならないけど

あんまり雨が
忍ぶように降るから
ふんわり心を
撫でられたような気がして
臆病な恋心が ため息をついた



朝陽色の刹那


夜と朝の狭間
太陽の光が空間を
切り分ける時

終わる命
生まれる命
無口なまま微笑みだけ交わす
世界が少し伸びをする
朝露の中に
昨日の夢が見え隠れしてる

始まりの時
終わりの時
平行線が一瞬だけねじれほどける
誰かが歩き出そうとしている
涙の中に
悲しみと喜びが乱反射した

永訣なのか
永遠なのか

愛はいつも

朝陽色の刹那の中で
咲く小さな花のようだ



宵闇色の泪


雲に隠された月は
微笑んでいるか
泣いているのか

湿気を含んだ雲と風が
黒く渦を描きながら
絡んで明日を
目隠しする

おぼろな銀の月の明かり
それは 流した涙の反射光
僅かに足元を照らせよ

青く浮き出る細い道を
そっとそっと歩いて行こう

迷い道も夢の中
月の泪が雨になる頃
空も白むだろう

迷い人は闇の中
空耳のような風音を聞く
月のため息だろうか

僅かな光 
途切れずに足元を照らせよ


呪文


この手が何も成せないことを知った
この目が全てを見渡せないこともわかった

誰かを好きになって
自分がどんなに他愛ない存在で
魅力がないのか 痛いくらい思い知る

愛することで美しくなれるなんて
ウソだ!
どんどん ずる賢く醜くなる
思いあぐねて 眉間の皺は深くなるばかり
眠れぬ夜を重ね
幽霊のような朧な灰色の瞳

魔法を信じたいくらい、好きだ
子供の頃の純真さからではなく
奇跡を願うような切実さを秘めて
呪文を唱えたい

あなたが好きだ
それは 最大の呪文
私を悪魔に変えてしまう

あなたが好きだ
この世の終わりさえ厭わない
私が悪魔に変わっていく時



足の小指が誘惑されて


サンダルの先
撫でていくぬるい風

足音させず近づいた
振り向く時間もなく耳元に
聞こえた囁きの主は
舌先三寸の仕事師のよう

晩夏の雨がぽつんぽつんと
足の指を鍵盤のように
叩いて落ちてくる

奇妙なラプソディ奏でながら
ヒゲ先三寸の策略家は
リズムに合わせ囁きをつづける

ためらう気持ちはもう秋色めいて
Yesと言えないから
まぶた閉じて首を振った

雨は強くなる

鼓動も激しくなる

だけど・・・・

まぶた閉じて 泪がにじむ刹那よ



夢の窓


忙しい毎日の中で
忘れた頃 届いた一枚の葉書
懐かしい手書きの文字
ほんの数行の言葉が
とても優しい気持ちにしてくれる

君の笑顔が 小さな癖が
思い出されて 胸が
暖かくなるのがわかる

家族をつつむ存在になった今も
それは変わらないまま
君があの頃の素直さを
持っていることがとても嬉しい

元気ですとただ 一言で言い
それがとても大きな幸せになるから
遠く離れていて 逢うことも
逢う約束もかなわないけど

いつか

思い出したら 幸せの種をください
夢の窓は 君の手紙
私を明日へ 導いてくれる



ケッカン


ほんの小さい言葉に傷ついて
ヒビが入ったことに気がつかなかった
滲む赤い血には怯えるのに
亀裂の始まりを見落とした
体を走る青い輪郭に沿って
私が崩壊する瞬間
最後に見る物は何だろう
まぶた閉じれば懐かしい景色などなく
恐怖色の紅い闇が見えるだけ
泪さえ朱く染めて 壊れゆく



ケッカン


年をおうごとに浮き出る青い筋
太く細く
命がうねるその蔦は
つま先から頭の芯まで
この体に絡みつく

どこでも一度傷つけば
赤黒い愚痴が吹き出して
力無く骸骨がカタカタと笑うよ

壊れかけの心を覆う
青い魂の糸よ
どうか健やかに
我が命守れよ

メビウスの輪のような
青い魂の糸よ
どうか・・・



火星


サソリの目玉か
赤い星

悪魔の泪か
赤い星

それは きっと
かみさまの心臓
命を分け与えた残りで
こしらえたから

血の色をしている
赤い星



晩夏


蒸した風がだんだん冷えていく
ひぐらしの歌が
草むらの虫の声に変わる

サァっと雨が降って
すこし曇りがちの夜空
秋が雲に身を隠しながら
忍び寄る気配

時間と時間がゆるくゆっくりと
解け合っていく
夏と秋がゆっくりと
混ざり合っていく

夏の終わりは 
すこしだけ スローテンポに
夢を見ようよ



夕立


大きな声で泣きじゃくりながら
裸足で駆けていったのは 誰?

振り乱した髪も 気にせず
迫り上がる悲しみのままに
泪を流しながら

夏が終わる

ただそれが さみしくて
泣いていた

泪が雨を呼ぶ 空を黒く染めて
世界を濡らした

夏が終わる 夕立の中で
空を見ていた午後



思考


気持ちがナナメで 苛つく
どうにも複雑で 頭が痛い

晴れているのに遠くまで見渡せない空
雲が隠した季節は今どんな色をしているのか
愛想笑いと苦笑いの中間ではにかんで
答えが出ない 出せない 

奥歯が痛いのは
飲み込みきれない本音が刺さってるから
それとも 小さい嘘が傷になったからか

答えが出ない 見えない
気持ちはアンバランスに交差する

ため息と駆け落ちした幸せを探しに
旅にも出ようか

答えなんか無いよ あるわけ無いさ
どうでもいいと笑い飛ばせ



時間のびんづめ


手紙を詰めて海へ流すように
私の心を詰めて
時の流れに 投げてみよう

誰かが拾い上げて
想いのかけらを
手にするだろうか

私から離れて 小さい心の破片が
旅を始めた
誰かと出会い 誰かの心に
たどり着くその日まで




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