恋虫の章・・・ページ2

ニーナ・・


フロントグラスつたう雨を見つめて
ラジオから流れる曲を口ずさんで
ニーナ・・
『 海の底におうちを持ったら
  きっと毎日 こんなふうね 』と呟いた

新しいガムの封を切って
フルーツの香りを楽しみながら
ニーナ・・
『 音の無い深海なら
  音痴のあたしも思いきり歌えるかしら 』と笑った

サイレントムービーのように
君が微笑む 目を閉じる ガムを噛む
雨足はいよいよ強くなり 嵐を予感させる
だけど君は 何かを期待するように
黒い空を見上げて 稲光の方角を確かめる

バックから口紅を取りだして
バニティーミラーを降ろして
ニーナ・・
『 今日のあたし 人魚姫の気分
  水も滴るナントカなの 』と首をすくめた

君が好きだと言いかけた僕の声を
雨が消す 街の騒音が消す 幻のように
夏の少し前 土砂降りの中 恋に落ちた日の思い出

Melody

雨上がりのしっとりとした空気
 たたんだ傘をステッキ代わりにして歩く
 『 虹がかかれば いいな 』 なんて
 いつになくはしゃいだ気分になる


 哀しみに囚われて 全てが見えなかったあの頃
 よけいに自分を殻に押し込めて
 見つからない答えを必死で探していた

 そんな時 あなたがくれた一言は
 厳しいけれど真心に溢れていて
 勇気を呼び覚ましてくれた

 やさしさが そよ風のように
 心を包む旋律になって
 閉ざしていたこの胸の扉を開けた

 微笑みから幸せが生まれて来るとしたら
 どんなときも微笑んでいよう
 もう大丈夫だと言える

 A thousand thanks!

 生きていることは それこそが
 素晴らしい可能性の始まりだと
 気がついた時 歩き出せた

 A thousand thanks!

 あなたのやさしさのメロディが
 背中を押してくれたように
 今度は私から誰かへ 伝えていきたい



小さな小さな薔薇の実は ハートの形
愛の結晶のようで 可愛らしい
そっと熟していく恋の美
きっと あなたの心の中でも・・・