戦場のピアニスト


2002年  監督: ロマン・ポランスキー  主演 エイドリアン・ブロディ


・簡単におはなしのこと
  1939年 9月、ナチス ドイツが ポーランドへ侵攻した日、 主人公 ピアニスト、シュピルマンはラジオ局で 生演奏をしていた。
華麗なピアノの調べを 砲撃の音が うち砕いて行く。やがて、ユダヤ人である彼の一家は 悲惨な歴史の中へ追い込まれる。
だが、奇跡が奇跡を呼び、年老いた両親 姉達や弟と別れ、彼ひとりが 激しい戦時下のワルシャワの街で生き延びることになる。
これは 実在したポーランドのあるピアニスト(来日もしている)の戦争体験の記録であり、監督ポランスキー自身の随想の記でもあるのだ。


・感想/ たったひとりきり、廃墟の中で 彼は身を潜め 時に病に倒れたり 怪我を負いながらも生きていく。その心には
見えない鍵盤があり、常に音が流れているようだった。雪のしんしんと降る音も、枯れ葉が風に舞う音も、銃撃音も何もかもが旋律となり
彼は 見えないピアノをいつも弾いていた。戦時下の薄曇りでどんよりとしたワルシャワの町並み、ゲットーの中の恐ろしい光景、
でも彼は、希望の小さな灯を燃やし続け、貪欲なまでに生きようとする。その姿に、何か教えられるものを感じた。
悲惨すぎるシーンもあり、息を飲むこともあったが これは実際にあったことなのだから、目をそむけてはいけないと一生懸命観た。
シュピルマンが 一生懸命生きようと頑張るように。単なる収容所を扱った悲劇の映画ではない、生きることを教えてくれる作品だ。



海の上のピアニスト

1998年  監督: ジュゼッペ・トルナトーレ  主演 ティム・ロス


・簡単におはなしのこと
  大西洋を往復する豪華客船ヴァージニア号。そこに置き去りにされた赤ん坊。彼は拾われた年1900年にちなみ
ナインティーン・ハンドレッド=1900と名付けられた。そして陸での生活にもあこがれつつも、船の中で暮らし続ける。
海とピアノと船、ただそれだけが彼の家族であり、世界の全てだった。


・感想/  船という限られた小さな世界は 1900(ナインハンドレッド)の心、そのものだったような気がする。初恋の人を窓越しに見て
船を降りようか迷っても、降りられない。心の殻を破れないかのように。
彼が弾くピアノの調べは まるで彼の想いそのままのように、自然に流れ、時に切なく、時に激しく 胸を打った。
もし彼が 船を降りたら どんな人生を送っただろうと、想像する。現実の厳しい洗礼を受け、彼の純粋な旋律は 消えてしまったかも
しれないと思った。こんな一生を送る人は、実際にはいないのだろうが、だからこそ、トルナトーレが描く、夢とロマンが浸みてくる作品だ。


 二つの作品で感じること


  ひとりは、実在した人物、もうひとりは物語のみの人物。
だが、共通して思うことは、どちらの主人公もピアノを弾き出した瞬間
その魂が 燃え始め、今生きている 今演奏している
この旋律が私の言葉、私の鼓動、私の全てなのだと語りかけているような気がした。
特に シュピルマンは 廃墟の中で もう食べるものもなく手に少し震えもきているのに
ドイツ将校に見つかり 何か演奏してくれと言われ 弾きだした瞬間、全身の血が
演奏により沸き返るように、活き活きとする。1900は、初恋の彼女の愛しい面影を
おいながら即興で愛の言葉をそのまま旋律に変えて弾くシーンで 同じ事を感じた。
希望がそこに 小さく燃えているような気がしたのです。感動しました。


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